とっておきインタビュー 第16回
2004.1


活気あり、あたたかさあふれる舞台 (秋風亭てい朝
話芸の愛好者たちで作る「広島演芸協会」
会長 沖 博義(秋風亭てい朝)さん

 
 落語を中心に、漫談、漫才、コント、講談、指笛などもあって、子どもから大人まで楽しめる演芸を披露している「広島演芸協会」。アマチュアとは侮れない、活気があり、あたたかさあふれる舞台です。今回、広島演芸協会の会長で、第13回全国落語競演会に出演 し文部大臣奨励賞を受賞し第1位に輝いた「秋風亭てい朝」こと沖 博義さんに、落語の魅力、夢などを伺いました。


演芸協会を立ち上げられたのは。
 大学卒業後、就職してから落語とは少し遠ざかっていましたが、ある時異業種交流会に 参加して披露したら評判がよくて、口コミで出演依頼が来るようになりました。そうして いるうちに、平成7年に南区民センターで立ち上げられた第1回話芸に親しむ夕べ「話・ 和・輪・わー」に出演された知人の荒井敬三さん(現在、演芸協会名誉会員)から出演依 頼を受け、第2回から私も参加するようになりました。
  5〜6回開催した頃、どうせやるなら一つの会を作って助け合ってできたらと思い、お 客さんとして来てくれていた昔の仲間などに声をかけて、平成10年に「広島演芸協会」 を発足しました。

▲「話・和・輪・ワーパート19」
での舞台あいさつ

なるほど。会に入る条件は厳しいんですか。
 いえいえ。「2人以上の観客を対象に演じた経験を持つ者」なら、プロ・アマを問わず誰 でも入会できます。入るのも自由、辞めるのも自由、除名もなく、本人が辞めると言わな い限り続けられます。会員は、現在19名で、主婦を含め、会社員、銀行マン、公務員、 消防士など職業もさまざまで、ほとんどの人が本業との二足のわらじを履いています。ア マチュアの人でも芸を追い求める姿勢はプロと変わりないと思っています。

現在、協会としてはどんな活動をしていらっしゃいますか。
 年4回、南区民文化センターで「話芸に親しむ夕べ」を、基本的にメンバー全員でやっ ています。1月31日(土)に28回目が行われます。常連さんが100名前後あり、多いと きは150名くらい来て下さることもあるんですよ。終演後のアンケートには好意的な感想 や出演者に対する激励の言葉に混じって、時に厳しい批判なども見らますが、演じる側、 鑑賞する側とも楽しく熱気に満ちた会になっています。まったくボランティアですが、お 客さんの喜んでくださる顔を見るのが楽しみで頑張っています。
  平成14年から高田郡美土里町の神楽門前湯治村で「かむくら寄席」が始まりました。 登録しているメンバー13〜4人がやりくりして出演しています。今年は1月から3月ま でと12月の土曜日20時からと日曜日14時からの2回公演です。その他は出演依頼をそ れぞれが受けています。

お互いに会員同士で学ばれることも多いでしょうね。

▲ 広島で唯一の夫婦漫才
 「おとん&おかん」
 特に勉強会などはしていませんが、共演の時は、袖で聞いていてお互いに注意しあった り、無言のうちに人の芸を見て吸収したりしています。楽屋での立居振舞や、若い人は着 物の柄から帯の締め方まで見て学んでいるんじゃないかと思います。一緒にやるとお互い に刺激になります。


広島の落語の状況はいかがですか?
 昭和40年代半ばから平成にかけては、広島大、広島修道大など、広島の大学には落語 研究会、略して「落研」があり、大学祭で寄席を開くなど活躍していました。現在は廃部 に追い込まれたり、「落研」には厳しい状況が続いています。今の若い人たちは厳しくコツ コツと稽古するのが駄目なようですね。笑いも瞬間で受けようとするものが多く、それは それで面白いのですが…。古典落語では、侍(さむらい)が出たり町人が出たり、その言 葉使いや仕草で身分が分かったりします。説明していくところ、つまり仕込みがあって、 笑いがあって、やっと落ちにつながる。それがまどろっこしくて、今の若い人には我慢できないんでしょうか。
  それに比べると社会人のアマチュア落語家たちはまだ元気です。社会人が定期的に落語 会を続けているのは、中国地方ではたぶん広島が唯一です。全国的にも少ないから、遠方 からも声がかかります。広島のお客さんは、なかなか目が肥えていて、やっていて手ごた えを感じます。
▲出前落語会は大人気
 (廿日市・阿品台 2丁目集会所)


落語の魅力はなんですか。

▲県民文化祭で熱演
 (上下町・翁座)

 すべて自分が責任を持って演じられるところですね。主役から端役から、それこそ芝居 で言えば、舞台監督から演出から、何だってできます。失敗しても相手役に迷惑をかけま せんしね(笑)。自分の演じ方によって、お客さんが大笑いもすれば、泣くこともある。そ れが、ツボにはまった時は、何とも言えず気持がいいですね。終わってから「おもしろか った。また来たいね」とお客さんが言っているのを聞くと、それまでの苦労を忘れて、や ってよかったと思います。
 
今はビデオやCDもありますが、やはり落語はライブで味わってほしいですね。息づか いから、顔の表情からストレートに伝わってくる。話芸の醍醐味はやっぱり生です。


ご自身の活動は。
 「秋風亭てい朝の落語をぶつ会」という独演会を定期的に行うほか、昨年は104ヵ所、154席やりました。地域の祭りや公民館の高齢者大学、小学校のPTCなどでもやりまし た。本職は建設会社の営業マンですから、全ての時間を落語に割くわけにはいきません。 仕事の移動中に稽古したりしています。
  「どのようにスケジュール調整をするのですか」とよく聞かれますが、約束が入ってきた先着順で予定を決めています。仕事も落語も、どちらも私にとっては大切なので、この方法が悩まなくて一番いいです。

▲落語では手ぬぐいと
扇子は大切な小道具


将来の夢は何ですか。
 広島に常設の寄席をつくることです。100人くらいの小規模でもいいんです。りっぱな 建物でなくても、プレハブでもいいんです。練習が24時間できて、ホールの使用時間も、 今は夜9時までというところがほとんどですが、せめて夜12時まで使えるものがあると いいですね。行けばいつでも何かやっているという文化的環境が必要だと思います。

【広島演芸協会連絡先】沖 博義さん宅 電話227−5717
【副会長 桂笑福さんのホームページ】
 
http://www3.justnet.ne.jp/~fkashi/enngei.html
【落語予定表】
 ●「落語と篠笛のつどい」〜新たなる実験

 時:1月16日(金)19時〜
 所:knie bay club(三川町6-3プリシアビル2F)
 ¥:未定
 問:knie bay club 初田 電話:090−9501−3885
 ●話芸に親しむ夕べ「話・和・輪・ワー」パート28
 時:1月31日(土)18時〜
 所:南区民文化センタースタジオ
 ¥:500円(当日券のみ)全席自由 小・中・高校生無料
 問:南区民文化センター 電話:251-4120

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