2003.01


世界へはばたけ!ちんどん倶楽部
広島ちんどん倶楽部マネージャー
池田正彦さん

 
素人チンドンとして活動を続けている「広島ちんどん倶楽部」。舟入公民館でグループが結成されて2年余りが過ぎました。メンバーは、「おトキさん」と愛称されている座長の土屋時子さんをはじめ、20歳から92歳までの総勢15人で、会社員やお医者さん、自営業といったさまざまな職業の人が集まっています。三味線、クラリネット、アコーディオンにぎやかな“チンドン太鼓”の音、そして昔懐かしい歌謡曲や民謡の数々郷愁をさそうメロディーが響きます。みんなグループに入ってはじめて楽器をはじめた人たちばかりです。お祭り、福祉施設、敬老会など、どこでも場を盛り上げて喜ばれている「広島ちんどん倶楽部」の魅力を、マネージャーである池田正彦さんに伺いました。


始められたきっかけは何ですか。
 座長の土屋さんが二人芝居「ばらっく 相生0番地物語」を2000年の7月に上演しました。戦後の本川沿いのバラック建てのスラム街を舞台に、中国から引き揚げ直後に被爆し、チンドン屋を営みながらたくましく生きる母子の姿を描いたお芝居です。ラストシーンで、チンドンが登場します。そのために“にわかチンドン”を仕立てたのですが、なかなか好評だったので、メンバーの何人かが集まって、その年の10月から公民館活動としてスタートさせました。
結成後、今までにどんな活動をされてきましたか。また、これからの活動は?
 商店会のまつり、大道芸大会、ホテルや展示場のイベント、区民まつり、敬老会などいろいろなものに参加してきました。2002年3月には東区民文化センターで広島初の「ちんどんライブ」を開催しました。2時間たっぷり、内容は非常にアットホームでおもしろかったと喜んでいただきました。「おひねり」が飛んだり、昔の芝居小屋のような雰囲気だったんですよ。4月には富山県で開催された「全日本チンドンコンクール」にも参加しました。
  2003年は8月末にポーランドのワルシャワに来てほしいという要請があります。ワルシャワ大学で行われる日本文化を研究する大会のオープニングで、演奏してほしいというものです。今年はそれを目標に改めて、仕切りなおして頑張ろうと思っています。目標を持つことは大切で、目標がないとなかなか持続していくことは難しいですね。ポーランドの歌にも挑戦してみようと思っていますし、現地の老人ホームや街角でも演奏できないかと計画中です。
初の海外進出ですね。ほかのチンドン屋さんと違う特色はどんなところでしょうか。
 幅広い職業の人たちがいて、土着性のある個性的でおもしろいアンサンブルになっています。中学の教員、公務員、大学職員、会社員、自営業と業種もいろいろです。芝居の経験のある人もおり、人を楽しませるコツを知っています。人を気持ちよくのせるにはまず、自分が楽しまなくてはいけない。それはばっちりです。また、演奏がうまいだけのグループはたくさんありますが、わが倶楽部はなによりも音をおぎなう声がよく出ていると自負しています。
 副座長の宮國泰明さんが、沖縄の宮古島の出身ということもあって、三味線の基となった琉球三線(さんしん)を演奏できます。レパートリーに沖縄の曲が多いのも特色です。最も得意とする曲も、どんな辛いことがあっても力強く生きようという沖縄民謡「安里屋ユンタ」です。
心から楽しんでいらっしゃるようですね。どこに楽しさの秘密があるんですか。
 チンドンを通して地域の人と繋がりができたり、心の触れ合いを感じたときはやってて良かったと思いますね。また頑張ろうとやる気が出てきます。必ず「おひねり」をくれるチンドンファンのラーメン屋のおばあちゃん、幟を持って歩いてくれたお姉さん、車椅子の輪をつくってくれたじいちゃん・ばあちゃん、一緒になって合奏となった鼓笛隊の幼稚園児たちなど、エピソードは数限りなく「こんなええ日本がまだあったんかいのう」という具合で、まさにチンドン冥利につきるというものです。
 倶楽部のメンバー同士、人間的に深いところで話し合って付き合っていけることも、今まで続けてこられた大きな要素だと思います。副座長の宮國さんは「みんなといるとふるさとの沖縄の家族といるようだ。彼らの前では、いくらでも自分のすきや欠点をさらけ出せる。泣いたり、笑ったり、血はつながっていないけど親子兄弟ですね」と常々話しています。横のつながりがいいんです。チンドンの中で人間同士のかかわりを勉強してきたと思っています。
これからの夢は何ですか。
 座長の土屋さんには特別な思いがあって「テロ、戦争もある、景気も悪い、そういう時代にあって、私たちの元気なチンドン音楽を聴いて、その人が輝いていた良かった時代を思い出したり、頑張っていこうという人が少しでもいれば、チンドンをやっている意味があるんじゃないかと思います。だから、この広島ちんどんの音色が、いろいろな人の所に届けばいいなと思っています」と言っています。誠に同感です。夢はみんなで一緒に海外で演奏することです。ワルシャワに行けることは夢の第一歩ですね。


 
【チンドン屋】
●語 源
かね(鉦)が「チン」と鳴って、太鼓が「ドン」と鳴るから“ちんどん”だとか。
(チンドン太鼓の図参照)
●歴 史
もともとチンドンの系譜をたどると、飴売りの客寄せ、市中音楽隊のジンタ、活動写真の楽隊あたりに行きあたる。はじめから、いろいろな要素が入りまじり(楽器だって和洋折衷)大正期より大衆的な広告宣伝業として確立していく。(池田さん発行:通信ちんどん倶楽部3号より)

【レパートリー】
美しき天然・安里屋ユンタ・蒲田行進曲・星影のワルツ・北国の春・明日があるさ・炭坑節・アリラン・さよなら港・瀬戸の花嫁・島そだち・19の春・チンドン小唄(お富さん)・チャンチキおけさ・好きになった人・東京ウギブギ・花笠音頭・長崎物語など多数

【活 動】
■と き:毎週木曜日、19時〜21時
■ところ:舟入公民館
■問合せ:マネージャー/池田正彦082(291)7615

CLOSE